PTC
PTCについて
この方式は、電気式床暖房界に近年登場したシステムです。弊社も10年程前から、この製品につき多くのメーカーのものを取り寄せ、そのシステムの検証をしてまいりました。その間にメーカーが取り扱いをやめたり、倒産などあったため、継続してその製品の是非について結論付いた結果を出すに至っていません。また、その様な都合上、不明確と思われる点について検証中です。現在のところ、弊社としてはこの手の製品群は扱っておりません。
この方式については、ニクロム線方式・炭素繊維方式の様な比較をするのではなく、箇条書き的に弊社の見解を述べたいと考えます。
このシステムの特徴を下記の図で、まず、ご説明いたします。
このシステムの多くは、「導電性の粒子」に電気が流れ、発熱をし、ある温度まで上昇すると「絶縁性のマトリックス樹脂」が膨張し、接合し電気が流れていた「導電性の粒子」間がその膨張により離され、電気が通電しにくくなり、そして温度が下がるとまた自動的に収縮し、電気が流れ始めるという非常に画期的なシステム構成となっています。これがちなみに「自己温度制御機能付き床暖房」といわれる所以です。つまり、従来のパネル式電気床暖房が、放熱部+(均熱部+温度センサー+温度過昇防止装置+断熱材)で構成されているのに対し、この製品は()内を全て取り除くことができます。0.5mmという薄いパネルゆえ、放熱パネル周りのレベル調整に使用する副材作業が無くなることなど、一見驚くべきコスト削減が可能となるところにあります。それ故に、多くの業者がこのシステムに目を付け、コスト重視を切望する建築業界に一挙に広がりました。
しかし弊社は、責任設計施工という形態で各々の現場にPL保険をかけ、施工させて頂いている以上、これらだけを鵜呑みにするわけにはいかないことを下記のように示したいと思います。
1.安全性と耐久性
このシステムで中核素材となる「絶縁性マトリックス樹脂」の性能です。つまり、自己温度制御により膨張・収縮が10年をひと区切りとした場合、少なくても数万回以上の一連の動作が行われることになります。もし「絶縁性マトリックス樹脂」が何らかの原因で正常作動しなくなった場合、電気が流れっぱなしとなり、火災の原因となる危険性が払拭できません。その素材の耐久性についても、未だしっかりしたデータが第三者機関より何ら示されていないことも採用していない理由です。
2.断熱材を不要とする考え方
温水式にせよ電気式にせよ、その温度の上昇効果を高めるために、パネル式の場合は必ずパネル直下に断熱材をセットします。特に電気式の場合は、ランニングコストを考えると温水式よりその効果は大です。一概に薄さを売り物にし、断熱材をなくすという考え方には、弊社としては理解できません。クライアント様に長い目で見た時に、ご迷惑をかけることに必ずなると考えます。
3.施工検査時及び故障時の対応
この方式は、電気抵抗値が温度によって変化するのが特徴です。弊社が問題視するのは、ニクロム線方式・炭素繊維方式と異なり、電気抵抗値の検査を行っても、正常か異常か明確に判断ができないところにあります。責任施工をとっている弊社にとっては、何とも手の打ちようのないところです。ちなみに以前この事を某メーカーに申し入れたところ、「このシステムは釘が刺さっても関係なく作動しますから安心です。つまり、何のチェックも必要としません。」という返事を頂いたことがありますが、無責任な回答と言わざるおえません。